セイ(青)ちゃんはセイ(紅)ちゃんに会いに事任八幡宮に行く事にしました。
お家を出ようとしていると蓮ちゃんが彩玉さんの
おひざから降りてちょこちょことやって来ました。
「セイお兄ちゃん、どこにお出かけするの?」と
顔を精一杯上にあげて不思議そうに聞いてきました。
最近少しセイ(青)ちゃんは背がたかくなったので蓮ちゃんと
お話するにはお膝をついて話さないと話しづらくなっています。
なのでセイちゃんは片膝をついて蓮ちゃんと顔を合わせて聞きました。
「なんだぁ?泣き虫蓮は今日は連れて行けないぞっ?」
冷たい言い方に聞こえますがその両手は蓮ちゃんの小さいお手てを
優しそうにぎゅっと軽く握っています。
「じゃあ行ってくるねっ!」そう言うと
蓮ちゃんの手を離して立ち上がって出かけようとしました。
蓮ちゃんはセイお兄ちゃんの優しい仕草にすごく嬉しくなり
「ぱぁっ」と笑顔になりました。
でも連れて行ってくれない事には少しむっとした顔をしました。
立ち上がっていってしまいそうになった時は焦っていました。
蓮ちゃんの感情のジェットコースター再びです。
ハクちゃんとフラちゃんはセイ(青)ちゃんと蓮ちゃんの様子を
おもちゃで遊ぶのを止めて興味深そうに見つめています。
最近いつも一緒にいる二人は邪気払いを成功させた時の
セイ(青)ちゃんのリーダーシップに、以前より尊敬の目で
セイ(青)ちゃんを見るようになりました。
セイ(青)ちゃんも成長した為かハクちゃんともフラちゃんとも楽しく
おもちゃ話題をしていて、おもちゃも寛大に貸してあげるようになりました。
スイちゃんはおもちゃで遊ばないのでお家の中にある木のように
その場にいる存在としてあんまり気にしなくなっています。
当のスイちゃんは相変わらず彩玉さんにくっついて寝ています。
ヴェールちゃんがいないので最近森の木さんには一人で会いに行っています。
一人でも森の木さん達は楽しそうに歓迎してくれます。
彩玉さんは森の木さん達に会いに行くスイちゃんが少し羨ましい様子です。
でも責任感が強いので蓮ちゃんが大きくなるまでは森の木さんの中で
眠るのは止めています。
森の木さん達が彩玉さんを慰めて声をかけてくれるので彩玉さんも
森の木さん達との交流が無いわけではありません。
邪気がひどい時は森の木さん達も元気が無くてほとんど話せませんでした。
スイちゃんも彩玉さんの事を考えていないようで実は気にしています。
森の木さん達に癒しを貰って彩玉さんにも分けてあげています。
(ちなみに森の木さん達は遠くに癒しを送れますが、近い時より疲れてしまうので
必要な時以外は遠くには送りません)
今は彩玉さん、スイちゃん、森の木さんそれぞれが穏やかな日常を楽しんでいます。
その彩玉さんもセイ(青)ちゃんと蓮ちゃんの様子を面白そうに見つめています。
「どこに行くの?僕も行きたいっ!連れて行ってぇ」と
珍しく蓮ちゃんがセイお兄ちゃんにダダをこねました。
いつもはお兄ちゃんがお出かけしても興味なさそうにしていました。
実は蓮ちゃんはまだ小さいのでお兄ちゃんが連れて行ってくれないのは
仕方ないと思っていました。大お兄ちゃんにくっついていたいのも
あってそこまでお兄ちゃんにわがままを言いませんでした。
セイお兄ちゃんにわがままを言ったら怖いというのもあります。
でも今日の蓮ちゃんは違います。
(赤ちゃんに会いに行くんだったら僕も行きたいっ。お友達だもん!
それに赤ちゃんにおもちゃをあげたいの・・・あっ!
そうだっ!セイお兄ちゃんに聞かなきゃ!)
蓮ちゃんの頭の中は忙しく色々考えていました。
でも言葉ではわがままを言うだけでした。
「セイお兄ちゃんは赤ちゃんに会うの?赤ちゃんは僕のお友達なんだよっ。
僕もっ、僕も行くっ」
どこに行くのか言っていないのに蓮ちゃんは勘でどこに行くか当ててしまいました。
セイ(青)ちゃんはびっくりして目を見開いています。
(どうして分かったんだろう?)セイ(青)ちゃんはつい目をあげて
彩兄ちゃんを見つめました。困っている時の彩兄ちゃんです。
彩玉さんが立ち上がってゆっくりとセイ(青)ちゃんと蓮ちゃんの所に向かいました。
スイちゃんは急に寝床が動いていなくなったので
(彩玉さんは寝床扱いです。森の木さんの
癒しを届けつつも気持ちよい寝床が大好きです)
ガクッとソファに倒れましたが目をこすりながら彩玉さんの歩いていくのを
見つめた後ソファで体を預けてもう一度寝直してしまいました。右の手をまっすぐに
伸ばして上にあげて頭をその上にのせてソファに全身を預けています。
もううたたねでは無く全力で眠るようです。
彩玉さんは「蓮ちゃん、セイ(青)ちゃんは蓮ちゃんを抱っこしてお外には
行けないんだよ?」
「でもっ。僕のお友達だもん!お兄ちゃんだけ会うのずるいもん!」
蓮ちゃんはいやいやをしてお兄ちゃんのお洋服の裾を握り締めました。
絶対連れて行って欲しいから必死です。
彩玉さんは蓮ちゃんの我がままを聞いてあげたい思いと、我がままを聞いてばかりでは
蓮ちゃんの為にならないと言う思いで少し考えました。
(蓮ちゃんは赤ちゃんがやっと出来た友達だから。お友達との交流を通して
もっと色んな子とお友達になって欲しい。すると・・・やはり今回は連れて行って
あげるべきかな・・・)
心を決めてセイ(青)ちゃんに言いました。
蓮ちゃんは僕が後から連れて行くから先にセイ(紅)ちゃんに会って来るといいよ。
「えっ?大兄ちゃんいいの?これってさ~泣き虫蓮のわがままだよね?ちゃんと怒って
我慢させた方がいいと思うんだよねっ」
早く出かけたいのに蓮ちゃんのせいで出かけられないセイ(青)ちゃんは少し怒り気味です。
だから蓮ちゃんはわがままだと思っています。
彩玉さんはセイ(青)ちゃんに
「蓮ちゃんにやっと出来た友達だからね。セイ(青)ちゃんもお友達のセイ(紅)ちゃんに
会いたいから行くんだよね?蓮ちゃんも同じ気持ちなんだよ」
セイ(青)ちゃんはうっと言葉に詰まりました。そういえばその通りです。
おじいちゃん先生に言われていたのにまた自分の事ばかりになっていました。
「うん・・・そうだよねっ。蓮も会いたいよね!分かった!
じゃあ先に行っているから後から来るといいよ!」
そう彩玉さんに言った後、裾を握って離さない蓮ちゃんにもう一度笑いかけました。
「蓮もさっ、後から来ればいいよっ。先に行っているね!」
蓮ちゃんは嬉しそうに「うんっ!」と頷きました。そしてさっき言い忘れていた事を
思い出しました。
「あっ、あのねっ、赤ちゃんが音の鳴るおもちゃが好きだって言ってたのっ、
セイお兄ちゃんのおもちゃをあげてもい~いっ?赤ちゃんはねっ。おもちゃが無くて
可哀そうなんだよ~」ととても可哀そうなんだアピールをしました。
彩玉さんは(おおっ蓮ちゃん上手いっ)と少し蓮ちゃんの言葉に感心しました。
(おもちゃが無くて可哀そうと言えばセイ(青)ちゃんも、赤ちゃんのおもちゃで
自分が使っていないのもあって、おもちゃをあげるかも知れないな)と思いました。
案の定セイ(青)ちゃんも「そうかぁ。そうだよね・・おもちゃ無いなんて
すごく可哀そうなんだね・・赤ちゃんがおもちゃの楽しさを味わえないなんて
もったいないよねっ。うんっ、そうだねっ!蓮ちゃんの初めてのお友達だしっ、
いいよっ!いつもは絶対あげないけどっ、今回はあげるよっ。
どれがいいの?僕がおもちゃを赤ちゃんに持って行ってあげるねっ」
とすごく気前が良くなりました。
でも蓮ちゃんや彩玉さんでは無く自分で持っていくところはやっぱりセイ(青)ちゃんです。
手離すぎりぎりまでおもちゃを手に持っていたいようです。
蓮ちゃんはお兄ちゃんの気が変わらない内に渡さなきゃと、とととっと
おもちゃ箱にかけて行きました。
赤ちゃんが特にお気に入りだったおもちゃを何個か手に持とうとして持ち切れずに
落っことしています。
彩玉さんが苦笑しながら拾ってあげました。
セイ(青)ちゃんはおもちゃを壊されそうでハラハラして一緒に拾いながら
一個ずつ壊れていないか確認しています。
蓮ちゃんはおもちゃを何個あげていいかセイお兄ちゃんに聞きました。
「赤ちゃんはねっ。おもちゃでいっぱい遊びたいと思うのっ。だから
いっこじゃ足りないと思うの。赤ちゃんに何個あげてもいいのっ?」
そうお兄ちゃんを見ながら首を傾げて聞きました。
セイ(青)ちゃんはう~んと悩み出しました。
あぐらをかいておもちゃをひとつずつ吟味して
います。
(何個も手離すのは嫌だけど・・・赤ちゃんは蓮ちゃんの最初のお友達で、
これから修行に行く神社にいる弟分で・・どうしよかなぁ)
それで身を切る思いでおもちゃを3個だけ選びました。
セイ(青)ちゃんにとってはとっても苦渋の決断でした。
くまちゃんのおもちゃと、丸いおもちゃと、細長いおもちゃをひとつずつです。
くまちゃんのおもちゃは蓮ちゃんが是非持って行ってもらいたいとの希望でした。
セイ(青)ちゃんはおもちゃを袋に入れてもらって首にかけると
「じゃあ先に行ってるねっ!」と彩玉さん達に声をかけて
早速セイ(紅)ちゃんに会うために飛び立っていきました。
蓮ちゃんは「赤ちゃんに後から行くって言ってね~」とおててをぶんぶんと振って
見送りました。
彩玉さんはセイ(青)ちゃんはちゃんと赤ちゃんにおもちゃを上げるのか
少し心配でしたが同じように見送りました。
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