小龍ちゃん達の思いと赤ちゃんの癒しとセイちゃんズの悲しさ
その日の邪気払いも落ち着いてルミエールちゃん達は
一息ついていました。
神様達は嬉しそうにお礼を言われていました。
(何を話されていたかは分かりません)
落ち着いてからルミエールちゃん達はセイ(紅)ちゃんに
挨拶していないと思い出しました。
それでそろってセイ(紅)ちゃんに会いに行きました。
彩玉さんと蓮ちゃんも一緒です。
彩玉さんはセイちゃんズの再会の邪魔にならないように
二人だけ(赤ちゃんもいますが)にしてあげていたようです。
ルミエールちゃん達は初めてセイ(紅)ちゃんに会います。
なんだか緊張でドキドキしました。
みやちゃんと一緒に住んでいる紅龍ちゃん。
皆を派遣してくれた人の所にいるのもありますが
龍宇お父さんに一番会う小龍ちゃんです。
龍宇お父さんに変な事は伝わらないと思いますが
(お父さんは今の僕をどう思っているかな?)
それぞれそんな思いがよぎりました。
その龍宇お父さんに年中会っていても緊張しないようなので
何だか少し他の子と違う気がしています。
それも緊張する原因になっています。
小龍ちゃん達はごくんとつばを飲み込みました。
ちなみにスイちゃんは眠いのであくびをしています。
緊張はスイちゃんにはまるでありません。
ヴェールちゃんはそのスイちゃんにびっくりしました。
目を見開いて口をあんぐりと開けて見ていましたが、
スイちゃんを見ていると気が楽になりました。
それでつい「ぷっ!あははっ」と小さく笑ってしまいました。
ルミエールちゃんは黒龍ちゃんなんで気合を入れました。
(ここは僕が話しかけないと!)黒龍ちゃんはみんなのお兄さんとして
お空の時と一緒で皆を率いるような気持で
頑張って話しかける事にしました。
セイ(紅)ちゃんは楽しそうにセイ(青)ちゃんとお話を
していましたが小龍ちゃん達が皆でやって来るのを見て
話すのをやめました。
6人の小龍ちゃん達。初めて会う小龍ちゃんがこんなに
まとめて自分を見ているとセイ(紅)ちゃんも緊張してきました。
セイ(青)ちゃんの方は緊張とは無縁です。
「おぅ、来たか!邪気払いしてたんだろ?もういいのか?」と
気軽に話しかけました。
それでルミエールちゃん達は気がそれて緊張が少しほぐれました。
でもセイ(青)ちゃんの言い方に疲れていたのもあってカチンとも来ていました。
せっせと頑張って来たのに・・呑気にしていて他人事のようです。
せめてほめるなり、謝るなり違う言い方があるんでは無いかと思いました。
でもここでの邪気払いは強制する事では無く皆自発的に行った事なので
ルミエールちゃん達は余計な事を言わないように我慢しました。
「あっ、うん!もう大丈夫だよっ」
ルミエールちゃんはそれで無難な言葉を言いました。
「うん、僕たちで頑張ったの」
ブランちゃんは嫌味を言うつもりでは無かったのですが
つい嫌味っぽくなってしまいました。
ヴェールちゃんは
スイちゃんが気になって半分気がそれています。
だから何にも考えていませんでした。
ルミエールちゃんに肘でつつかれて
「えっ?うんそうなの!」と頷きました。
ルミエールちゃん達が言わなかった事ですが龍ちゃん一家に来て
一番長いハクちゃんは自分が言うべきだと思いました。
「僕たちすごく頑張ってたんだよ~セイ(青)ちゃん
どうして来なかったの?」
フラちゃんはハクちゃんの腕をつかんで「止めなよ」と
言いました。神社でけんかは良くないと思っています。
「ハクちゃん、セイ(青)ちゃんはお友達の
セイ(紅)ちゃんに会っていたんだもの、仕方ないと
思うよ」
そう、なだめようとしましたがハクちゃんには
納得がいきません。
「でもそれって邪気払いの後でも出来ると思うのっ。
神様達は大変だったんだよっ。なのにセイ(青)ちゃんは
なんでお手伝いしなかったのっ?」と
珍しく強気な発言をしました。
ハクちゃんもセイ(青)ちゃんが呑気な発言をしていなければ
また、邪気払いの後で気が立っていなければ
普段ならここまで言いませんでした。
師匠の言葉を実践しようとしているハクちゃんは立派な
龍神様になるのが目標です。だからこそ修行先が事任八幡宮と
決まっていて自分よりも将来がしっかり見えている
セイ(青)ちゃんがその責任をきちっと
果たしていない事に怒りを覚えたのです。
ハクちゃんのその発言にルミエールちゃん達はちょっと
微妙な顔になりました。
セイ(青)ちゃんがお友達を優先したい気持ちもわかります。
でもハクちゃんのいう事ももっともだとも思いました。
セイ(青)ちゃんもつい他の事よりもセイ(紅)ちゃんに
会うのを優先してしまったので後ろめたくなりました。
大人になったら修行する神社の邪気払いを他の子に任せて
自分だけ友達と楽しく話していた事はいけない事だったと
気が付いて反省しました。
でも何よりもセイ(紅)ちゃんに会いたかったんです。
理性よりも会いたいという感情が優先してしまったんです。
小龍ちゃん達はまだ小さいのでついその事を分かっているつもりでも
考えてあげられなくなっていました。
揃って気まずい空気が漂っています。
セイ(紅)ちゃんは自分に会いに来たせいで
セイ(青)ちゃんの立場が悪くなって来たのでハラハラして見ています。
彩玉さんはセイ(青)ちゃんが旗色が悪くなってきたのを
見て、蓮ちゃんをぎゅっと抱きしめながら皆を落ち着かせなければと
声をかけようとしていますが、彩玉さんはこれだけいる小龍ちゃん達の
前に出て話すのが少し苦手なのでどうしていいか焦っています。
そこに急に割り込んだのが赤ちゃんでした。
微妙な空気を感じて何だか分からないものの、赤ちゃんなりに何かしようと思ったようです。
「こんにちは~僕は赤ちゃんです!」と元気に言いました。
小龍ちゃん達はそこで初めて赤ちゃんに気が付きました。
皆今まで緊迫していたのも忘れ赤ちゃんを目にした途端にほのぼのした空気が漂い出しました。
「えっ?赤ちゃん?なんでここに?」「うわぁ可愛いなぁ」
「赤ちゃんっ?僕も見たいっ、うわっ、かぁわいいっ」
「僕も見たいっ、ちょっと~かがんでよ~見えないよ~良く見せてっ」
「お兄ちゃん達のお名前は何ですか~僕は赤ちゃんです。お名前はまだないので
赤ちゃんのままです」
「あのねっ僕はルミエールちゃんだよっ」「僕はブランちゃんって言うの!」
「ちょっと押さないでっ、ぼ、ぼくはヴェールちゃんなんだぁ、いたっ痛いよっ」
赤ちゃんと仲良くなりたい子がいっぱいです。赤ちゃん大人気です。
「僕はハクちゃんなんだよ~ちょっとっお名前を言ったらどいてよ~
僕の顔を赤ちゃんに覚えてもらうんだからっ」
フラちゃんも前の子が前かがみになっているのでその肩を両手でつかんで
体重を乗せて後ろから馬乗りになりながら赤ちゃんにアピールしています
「あのねっ、僕はフラちゃんだよっ。赤ちゃんに見えるかな?みえるぅ?」
最初のほのぼのした空気はどこへやら、アイドルを前にしたファンのように
覚えてもらおうと必死になって赤ちゃんに群がっています。
その中でいつもと変わらないのがスイちゃんです。
スイちゃんはぼーっと皆の様子を眺めて「・・・すごいなぁ」と呑気にしています。
スイちゃんは労力を使いたくないので無理に赤ちゃんに近づきません。
でも緑龍の赤ちゃんなのでちょっと気になっています。
今度こっそり会いにこようと考えています。スイちゃんはちゃっかりしている部分もあります。
「お兄ちゃん達、お疲れですか?赤ちゃんは癒しをしたいです。
しょれは赤ちゃんのお仕事です」ちょっとかみながら赤ちゃんは
にっこりと笑ってそう言いました。
小龍ちゃん達は赤ちゃんの言葉と笑顔に揃って癒されています。
すでに先ほどのピリピリした空気はどこにもありません。
「では癒しをしますねっ。はいっはい~」一人一人に癒しの気を送ると
受けた小龍ちゃん達はニコニコしながら「ありがとっ」「ありがとう~」と
言いながら隣の子と笑いあって満足して帰っていきます。
赤ちゃんの癒しをこのまま帰ってからも味わいたいので長居する気が無くなっています。
何か忘れているような気もしましたが些細な事のように思えました。
最後はスイちゃんの番です。実はスイちゃんは邪気払いが出来ないのでほとんど
活躍していません。
のんびり邪気払いの様子を眺めつつ、森の木さん達と会話して癒しをしてあげていました。
でも赤ちゃんがいるのでそんなに癒しも必要なかったのです。
ヴェールちゃんは邪気払いが出来るのでそっちに参加していました。
疲れていないので赤ちゃんとちょっとだけお話をしました。
「僕はスイちゃんです。赤ちゃんは木さんと仲良しさんですか?」
「はいっ。赤ちゃんは木さんがだいしゅきですっ。スイちゃんもですか?」
「そうなのっ。スイちゃんも大好きですっ。ここの木さんは皆とても
優しい気を感じます、赤ちゃんの癒しで木さんは癒されて優しくなったのですねっ」
「うんっ、赤ちゃんはねっ、木さんの癒しをするのがお仕事だから
頑張るのっ。木さん優しい?そうなの~すごくしゅてきな木さんなの~」
と木さんの話題を楽しんでいます。
セイ(青)ちゃんはあれよあれよという間に怒っていたハクちゃんや他の小龍ちゃん達が
赤ちゃんと楽しく会話していると思ったら、癒されて帰っていったので
驚いていました。更にいつもあんまりしゃべらないスイちゃんがいっぱい
しゃべっているのでもびっくりしています。
少しの間木さんの話題で盛り上がったスイちゃんが、
赤ちゃんにバイバイして帰っていきました。
結局小龍ちゃん達は最初の目的をすっかり忘れて全員帰ってしまいました。
セイ(紅)ちゃんは小龍ちゃん達にすっかり忘れられていました。
赤ちゃんを抱っこしていたのにまるで銅像のように目立ちませんでした。
セイ(青)ちゃんと赤ちゃんが個性的なので余計です。
誰とも話すタイミングを見つけられず
(えっ?えっ?)と思っている内に皆帰ってしまいました。
「皆とお話してみたかったなぁ・・・」
がっかりしているセイ(紅)ちゃんを見てセイ(青)ちゃんは悲しくなってきました。
「セイ(紅)・・・ごめん・・僕のせいだよね。僕が邪気払いを
ちゃんとしてからセイ(紅)に会えば良かったんだ・・・
そうすればこんな風に他の子とお話出来ないこと無かったんだよね・・」
「セイ(青)ちゃん・・・・・
でも・・でもっセイ(青)ちゃんは邪気払いを後回しにしても
僕に会いたいって来てくれたんだよね。
他の子達とお話出来なかったのは残念だけど、でもセイ(青)ちゃんがそうして
会いたいって思ってくれたのはとっても嬉しいんだ。セイ(青)ちゃんありがとうねっ」
セイ(紅)ちゃんはそう言ってセイ(青)ちゃんに、にこっと微笑みました。
セイ(青)ちゃんは優しいセイ(紅)ちゃんの言葉に胸がいっぱいになりました。
色んな事を反省して悲しくなっていたので嬉しくて涙が出てきました。
袖口で涙をぬぐいながら「ありがと・・」と小さくつぶやきますがそれ以上言葉に出来ません。
(自分が慰めないといけないのに・・)セイ(紅)自身が僕のせいで悲しい思いをしたのに
慰めてくれている事を自分の事ながら少しふがいないと思っています。
でもセイ(紅)の言ってくれた言葉が灯のように心の中を温めてくれました。
(やっぱり親友っていいもんだな・・・)と
セイ(青)ちゃんは胸の中で親友への感謝の思いをかみしめていました。
それをそっと見守っていたのが彩玉さんでした。
彩玉さんは悲し気なセイちゃん二人に声をかけようと思いましたが
今話しかけるべきではないかも知れないと声をかけるのをやめました。
そして蓮ちゃんに「さぁ帰ろうね」と言って帰っていきました。
彩玉さんは赤ちゃんにも挨拶をしたかったのですが小龍ちゃん達の
後では赤ちゃんも疲れてしまうと思ってあえて赤ちゃんにも声をかけませんでした。
案の定赤ちゃんはセイ(紅)ちゃんの腕の中でぐっすりと眠ってしまっていました。
セイ(青)ちゃんが自分の感情の全てをを特に泣いている所を見せるのはセイ(紅)ちゃんだけです。
彩玉さんにも以前は見せていましたが大人になって来たので少し恥ずかしくて見せないように
なって来ました。セイ(紅)ちゃんはセイ(青)ちゃんの親友なので見せてもいいと思っています。
彩玉さんはそれを察して先に帰っていったのです。
ちなみにハクちゃんはお家に帰ったらセイ(青)ちゃんに言い過ぎたと大変後悔しました。
それでセイ(青)ちゃんが家に戻った時はお互いが謝りあったのでした。
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