小龍ちゃん達の邪気払いと赤ちゃん②

小龍ちゃんの話


彩玉さんは蓮ちゃんと赤ちゃんを両手抱っこで
家に入りました。
赤ちゃんはきょろきょろしています。
「セイ(紅)ちゃんはどこですか?僕は赤ちゃんなので
セイ(紅)ちゃんのお世話がいります」
知らないお家でちょっと不安そうな赤ちゃんです。
彩玉さんは可愛い赤ちゃんにニコッと笑って
「セイ(紅)ちゃんは今お出かけしたので、私が赤ちゃんの
お世話をするんだよ。私でもいい?
さっきお名前を聞いてたよね。私が彩玉でこの子は蓮ちゃんだよ。
よろしくね」
赤ちゃんはじ~っと彩玉さんのお顔を見つめました。
くりくりとした可愛い目で見つめられて彩玉さんの笑顔は
更に深くなりました。
「僕のお世話ですか?シャイ(彩がうまく言えずに間違えています。
セは言えるのにサは言いづらいのかな?)しゃんが
お世話ですか?僕はシャイしゃんでもいいです。
シャイしゃんよろしゅくです」とペコっと頭を下げました。
一度「し」を間違えたら
言葉がどんどんおかしくなってきてしまいました。
神社を離れたせいもあるのでしょうか?
でもその言葉もとっても可愛い赤ちゃんです。
蓮ちゃんは赤ちゃんをじ~っと眺めています。
いつもの親指しゃぶりをしながら眺めていたら
視線を感じた赤ちゃんがニコッとしました。
「レンちゃんですか?僕は赤ちゃんです。
よろしゅくです」
蓮ちゃんは思わず指をしゃぶるのを忘れて
赤ちゃんを見つめました。

蓮ちゃんは初めて仲良くしたい子に出会いました。
みるみる笑顔になりました。その笑顔はとてもまぶしく
光り輝いています。滅多に見せない蓮ちゃんのとびっきりの
笑顔です。
「僕は蓮ちゃんなの!よろしくねっ!
お家には赤ちゃんのおもちゃもあるのっ、僕とおもちゃで遊ぼうよっ!」
蓮ちゃんが自分からおもちゃで遊ぼうと誘いました。
早速彩玉さんのお膝からおりてとととっとおもちゃ箱に向かい
赤ちゃん用のおもちゃを選んで持ってきて
赤ちゃんに渡しています。
赤ちゃんはおもちゃを見て初めての遊び道具に目をキラキラ輝かせて
早速手に取っています。
「おもちゃですか~。これは何ですか~。うわぁ~。音がしゅる~
僕はおもちゃで遊ぶのですっ。おもちゃがしゅきなのでしゅっ」
興奮しているせいか更にサ行が変になりました。
言葉が「す」になったり「しゅ」になったりしています。
蓮ちゃんは家のおもちゃを気にいった赤ちゃんに胸を張って
威張ったように腰に手を当てて自慢しています。
「そうでしょ~、僕のお家のおもちゃは面白いんだよっ!」
彩玉さんは蓮ちゃんの行動に驚いて目を見開いて様子を見守っていましたが
微笑ましい蓮ちゃんと赤ちゃんの交流に
笑顔になりながら
蓮ちゃんが友達をやっと作った事を喜びました。

その後小龍ちゃん達の活躍で邪気払いはほとんど終了した様子です。
セイ(青)ちゃんがやり切ったとの表情で満足そうに額の汗をぬぐっている感じの
イメージが来ます。
セイ(紅)ちゃんは「やった!」とばかりに腰を落としてこぶしを握りしてしめて
両手を前に出し後ろに引いてガッツポーズをしています。
セイ(紅)ちゃんにしては珍しいポーズです。よほど嬉しかったのでしょう。
他の小龍ちゃん達はそれぞれ邪気払いの成功を二人で手を合わせて飛び跳ねて喜んでいます。
スイちゃんはヴェールちゃんを巻き込んでその場で肩を並べて頭をくっつけて
寝てしまいました。
ちゃんと癒しと浄化に力を尽くしていたので疲れが出たのでしょう。
神様はにこやかに微笑んでいらっしゃいます。
小龍ちゃん達は意気揚々と家に帰りました。

赤ちゃんは彩玉さんに抱かれておもちゃで遊びながらも
皆の帰宅を知ると
扉を閉める前浄化の気を送り込みました。
やるべき事はちゃんと分かっていた様子です。
小龍ちゃん達はそれぞれの活躍シーンを思い思いに
話し合いながらとても嬉しそうです。
興奮が収まらないでいます。

でも龍ちゃん達が集まりすぎては良くないので
セイ(紅)ちゃんと赤ちゃんはすぐに帰宅する事に
なりました。

赤ちゃんはやっと戻って来たセイ(紅)ちゃんに手を伸ばして
「抱っこして~」と甘えん坊をしました。
セイ(紅)ちゃんが小さい体でよろよろしながら
赤ちゃんを受け取ると
彩玉さんは腕が寂しくなった気がしました。
赤ちゃんの温かみが無くなると
風が吹き抜けるような感覚です。
帰ってしまうのが寂しいのだと感じながらも
蓮ちゃんを抱っこしなおしました。
セイ(紅)ちゃんは「赤ちゃんを
ありがとうございました」とぺこりと
挨拶しました。
彩玉さんは「いや良い子だからおとなしく
おもちゃで遊んでいたので私は何もしなかったよ」
と言いながらも赤ちゃんを見つめています。
赤ちゃんは疲れたセイ(紅)ちゃんを抱かれながら
癒してあげました。
次に他の子達も一斉に癒しを送りちょっと疲れたのか
お眠になりました。
小龍ちゃん達は癒されていくのを感じて
両手や傷ついた箇所が治っていくのを眺めています。
その後赤ちゃんににっこりして揃って「ありがとう、ありがとうですっ」と
お礼を言いました。
赤ちゃんは目をこすりながら
「僕は癒します。緑龍ちゃんだから。
赤ちゃんだからしゅこしです。しゅこしでしゅが
赤ちゃんはお役に立つ為にやるのでしゅ」
眠さでうとうとしてきました。
そのせいかまた「サ」行が変になりました。
そこで眠そうにしながらも蓮ちゃんを見ました。
赤ちゃんは蓮ちゃんにバイバイをして手を振っています。
蓮ちゃんと一緒に彩玉さんにもバイバイをしました。
彩玉さんもわかれるのを名残惜しく思いながら
「バイバイ」とあいさつをかえしました。

蓮ちゃんは親指しゃぶりをしながら帰ってしまうのを
感じて悲しくなりました。
赤ちゃんの手を身を乗り出してつかんで
引き留めようとしています。
「やっ。赤ちゃんは帰るのだめなのっ」

赤ちゃんはびっくりして一瞬眠気が覚めました。
目をぱちくりさせています。
セイ(紅)ちゃんもびっくりしています。
彩玉さんは焦って蓮ちゃんに手を離させようとしました。
「蓮ちゃん!ダメだよっ。手を離そうねっ」
でも蓮ちゃんはやっと気に入った友達が帰ってしまうのが
寂しくて悲しいです。おもちゃで引き留めたいと
思いました。

「やだっ。赤ちゃんはお家にまだいるのっ。もっと
おもちゃで遊ぶんだもんっ」
蓮ちゃんの頭の中にはおもちゃで楽しく遊んでいる
赤ちゃんの姿があります。
(きっと赤ちゃんはもっと遊ぶたいと思うの。
もっと赤ちゃんと遊んで、それから・・・あっ!そうだっ。
セイお兄ちゃんにおもちゃをあげていいかを聞かなきゃ!)
蓮ちゃんは赤ちゃんが楽しそうに遊んでいたおもちゃを
あげたいと思いました。そうすればまた遊びに来てくれるかも知れない
そう期待しています。
でも焦っているので言葉が上手く出てきません。
(おもちゃをあげたいの。赤ちゃんは僕のお友達だもん。
すごく嬉しそうだったから、赤ちゃんにおもちゃをあげるの!)
必死で頭の中でそんなことを考えています。
彩玉さんはいやいやする蓮ちゃんに困ってしまいました。
そこにセイ(青)ちゃんが登場しました。
セイ(青)ちゃんは後ろから蓮ちゃんのわきの下を
こちょこちょしました。
「こちょこちょ~」ニヤッと笑いながらのこちょこちょ攻撃です。
蓮ちゃんは「あっ」と声をあげてびっくりして
赤ちゃんから思わず手が離れてしまいました。
それからわきの下をかばいながら
「きゃっきゃっ、きゃっきゃっ」と笑いました。
蓮ちゃんをくすぐりながら
セイ(青)ちゃんはもう一人のセイ(紅)ちゃんに目で
今の内に行くように合図を送りました。
セイ(紅)ちゃんはうんと頷いて彩玉さん達皆に
もう一度ペコっと挨拶すると迎えに来た事任八幡宮の神様と
共に戻っていきました。

セイ(青)ちゃんがくすぐるのをやめてくすぐったいのが
落ち着いた蓮ちゃんが周囲を見ても赤ちゃんはいません。
(あ~あ・・おもちゃあげたかったのになぁ・・)
がっかりしてまた親指をしゃぶり出した蓮ちゃんに
セイ(青)ちゃんは「ほらっ!蓮の好きなおもちゃで
遊ぼうよっ。僕が一緒に遊んだげるよっ」そう言って
彩玉さんの腕から蓮ちゃんを下ろさせて手を引いて
おもちゃ箱に向かいました。
(お兄ちゃんと遊べるのっ!やったぁ!)
さっきまで赤ちゃんにおもちゃをあげられなくて残念に
思っていたのにセイお兄ちゃんが遊んでくれると聞くと
そんな事もすっかり忘れてしましました。

蓮ちゃんはお兄ちゃんに手を引かれながらニコニコと
嬉しそうにくっついて行きました。
心なしか足元がスキップしています。

セイ(青)ちゃんは邪気払いの成功で気が大きくなっています。
ですので蓮ちゃんの面倒を見る気になっていました。
セイ(青)ちゃんのそんな様子に彩玉さんは
セイ(青)ちゃんが少し大人になったと思いました。
高尾山に行った頃から少しずつ成長していたのですが
うすうす感じていても今まではそこまで気が付きませんでした。
でも今回の邪気払いの後のセイ(青)ちゃんは自信に満ちています。
蓮ちゃんの困った行動をさっさと止めさせて
悲しむ前に違う事に興味を移したことに彩玉さんは今までの
セイ(青)ちゃんと着実に変わって来た事にやっと気が付いたのです。
「うかうかしていられないな。私もしっかりしなければな」
苦笑してそうつぶやきました。
彩玉さんは蓮ちゃんの困った行動も自分よりも
うまく対処したセイ(青)ちゃんの成長に喜びを感じていました。

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