「きゃあっ、きゃっきゃ、きゃっきゃ、きゃはははっ、きゃっきゃっ!」
セイ(青)ちゃんに小怪獣として(危ない子)認定されたミエルちゃんは
とてもおもちゃを楽しんでいます。
その為セイ(青)ちゃんもおもちゃを取り上げる事が出来ません。
(あんなに楽しそうにおもちゃで遊んでるのは、すごくおもちゃの
事を気に入ってくれたんで嬉しいんだけどさ・・・でもっ
もっとおもちゃを優しく扱って欲しいよっ。
あっ!そんなに振ったらっああっ、ああああっ、もっ、もう持たせない方が
いいんじゃないかなっ、ああっ!)
セイ(青)ちゃんは赤ちゃんのもろさとパワフルさを
併せ持つミエルちゃんという存在を相手に困り果てていました。
これが他の子だったらすぐに怒っておもちゃを取り上げて
「おもちゃを大事にしない子にはおもちゃは貸さないんだからねっ!」と
叱っていたでしょう。
でもまだ小さい赤ちゃんです。さすがに物事が分からない赤ちゃんに
怒るのは可哀そうだと思っています。
そう思いつつも、振り回し方があまりに乱暴なので
時たま「ああっ、お、おっ、おもちゃが~」と飛び出しそうになりながら
ぐっと我慢を繰り返しています。
セイ(青)ちゃんはここに来てから今までこんなに我慢したことが無い位
色んな事を頑張って我慢をしています。
セイ(紅)ちゃんはそんなセイ(青)ちゃんに同情の
視線を送っています。
そしてセイ(青)ちゃんと同じように
ハラハラしておもちゃが壊れないか見守っています。
セイ(紅)ちゃん自身はおもちゃにはあんまり思い入れが無いので
さっきは「神様に補強してもらうから」と呑気に話していました。
でもミエルちゃんは一向に眠ろうとしません。
興奮して精一杯おもちゃを楽しみまくっています。
なので全然眠らないで暴れているミエルちゃんに
セイ(紅)ちゃんも困り出しました。
(そんなに暴れたらミエルちゃん大丈夫かなぁ?疲れすぎちゃうよ。
すごく心配だけど・・・興奮しているミエルちゃんをどうやって
止めたらいいか分からない・・・どうしようか・・・
それにセイ(青)ちゃんのおもちゃも壊れたりしたら
セイ(青)ちゃん悲しむだろうしなぁ)
いつもはのんびりなミエルちゃんの意外な一面にセイ(紅)ちゃんも
どうしていいかおろおろしてきていました。
セイちゃんズがそろって小怪獣の暴れる姿に戦々恐々としていると
やっとミエルちゃんが眠くなって来た様子です。
「きゃっきゃ!きゃ・・きゃっきゃ・・・きゃぁ・・き・・・すぅ・・
きゃぁ、きゃっきゃ・・すぅ・・」
あと少しで眠りそうです!
セイちゃんズは揃って『早くっ、早く眠って~!』と必死にの思いで
ミエルちゃんが眠るように祈りました。
そして固唾を飲んでミエルちゃんが眠るのを待ちました。
「きゃっきゃぁ・きぁ・・・すぅ・・・きゃ・・き・・すぅ・・
すぅぅぅすぅ」
その思いが通じたのかミエルちゃんはおもちゃを握りしめたまま
ぐっすりと眠ってしまいました。
やっと眠ったミエルちゃんにセイちゃんズはミエルちゃんの寝顔を見つめて
その後お互いの顔を見つめてニコッと笑いあい
ほっとして「はぁ~」っと詰めていた息を同時に吐きました。
そこまで行動が揃っていて息がぴったりです。
やっと緊張がほぐれて気持ちが楽になったので
早速セイ(紅)ちゃんがミエルちゃんの手からおもちゃを取ろうと
手を伸ばしましたがそれをセイ(青)ちゃんが
肩に手をかけて止めました。
セイ(紅)ちゃんが思わず見あげると、
セイ(青)ちゃんの顔はおもちゃ救出のためにとても真剣でした。
「僕がおもちゃをミエルちゃんの手から取るよっ!」
そう言うセイ(青)ちゃんを見て
改めて自分が手を貸さない方がいいと気が付きました。
力を込めておもちゃを取ろうとして壊したら大変です。
セイ(紅)ちゃんは「うん。そうだね」と頷いて
セイ(青)ちゃんに任せました。
早速セイ(青)ちゃんは
ミエルちゃんの手にあるおもちゃの救出に取り掛かりました。
力の強いミエルちゃんの手からおもちゃを救出するのは
時間がかかりましたがどうにかその手から二つのおもちゃを
膝からは一つのおもちゃを取り返しました。
ほっとしつつ急いでおもちゃ達が大丈夫か
じ~っとおもちゃの壊れ具合を確認してみました。
右から左からおもちゃの様子を確認してみると
痛々しいおもちゃ達が「痛かったよぅ」
と悲し気に泣いている気がしました。大分傷んで
あともう少し遊んでいたら壊れていました。
セイ(青)ちゃんは可哀そうなおもちゃ達を
撫でてあげました。「こんなにボロボロになって・・・
可哀そう・・」おもちゃに同情して胸元に抱きしめて
涙ぐんでいます。
セイ(紅)ちゃんは親友のその姿を見ながら
セイ(青)ちゃんの悲しさを思い、少し涙が出てきました。
自分の好きな物が同じ目にあったら辛いと思ったからです。
もらい泣きして涙ぐみながらも
おもちゃが少し苦手なのでそこまで
おもちゃにこだわる気持ちは理解出来ません。
(セイ(青)ちゃんをなんて言って慰めようかな・・・
でも・・僕・・よく分かんないな・・・
あの壊れやすい物に
なんであそこまでこだわれるんだろう?
いつかは壊れるんだし、僕がちょっと力を
こめたらすぐ壊れるから力加減難しいし・・
あんなにもろい物でよく遊べるよなぁ)
そこで涙を拭きながらミエルちゃんの寝顔を見てみました。
ミエルちゃんはおもちゃで満足したのか
幸せそうな笑顔で気持ち良さそうに「すぅすぅ」と眠っています。
さっきまでセイちゃんズを困らせていた暴れん坊さんには
見えません。
(・・ミエルちゃんがまだ赤ちゃんで良かったよ。
もう少し大きかったら持った瞬間に壊れていたかもなぁ。
そうしたらセイ(青)ちゃんはもっと悲しかったよね・・
そんな姿は見たくないな・・大好きな親友の悲しむ姿は辛いもん・・)
そう思いながらもう一度セイ(青)ちゃんの様子を見ると
セイちゃんがまだおもちゃを抱きしめて涙ぐんでいます。
痛々しい様子にセイ(紅)ちゃんもまた胸が痛くなりました。
手を伸ばして「元気出して」と慰めようとした
ちょうどその時、セイ(青)ちゃんは涙を袖口で
ぐいっと乱暴に拭くとキッっと顔を上にあげて
決意したようにセイ(紅)ちゃんに聞きました。
「ねぇ!セイ(紅)、神様達はどこにいるの?
僕、直接神様におもちゃの保護をお願いしたいんだ!」
セイ(青)ちゃんの心の中ではおもちゃは補強する物では
無く保護する物にいつの間にか変わっています。
セイ(紅)ちゃんは神様達も八幡宮を守るお仕事を
忙しくされているのですぐには無理だろうと思いました。
「今はお忙しいので後で僕から頼んでみるよ」
そう言うとセイ(青)ちゃんは自分の口から
おもちゃの保護をお願いしたいと思っていたので
残念そうな顔になりました。
「そうなの?僕・・ちゃんとおもちゃを守って欲しいって
神様達にお願いしようと思っていたんだけどなぁ・・
僕が直接お願いして神様達におもちゃがどんなに
辛い思いをしたかを分かって欲しいんだ!
あの子の脅威から守って欲しいって直接言った方が
伝わるかなって思うんだよね・・」
そう話しながらセイ(青)ちゃんの頭の中でミエルちゃんと言う
小怪獣がおもちゃの街を破壊して歩いている姿が浮かんでいます。
「きゃはははっ、きゃあっ、きゃっきゃっ、きゃあ~」と
笑いながらおもちゃを次々に破壊して行きます。
まだ歩けないミエルちゃんですのでこれはちょっと
考えすぎです。
でもミエルちゃんがおもちゃを倒しながら(セイ(青)ちゃん
には破壊に見えます)つたない足取りでとてとてと歩く
その姿は可愛すぎて、他の人にその姿が直接見えたとしても
脅威と感じたりはしないでしょう。
そんな風に感じるのはおもちゃをとっても愛する
セイ(青)ちゃんだけです。
勝手に脅威を感じているセイ(青)ちゃんは
絶対におもちゃが安全になるまで家に帰らないと決めました。
それは実際周囲にとっては迷惑この上ない決断でした。
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