事任八幡宮での出来事
1
彩玉さんは蓮ちゃんを抱っこして飛んでいます。
レイちゃんはまだ飛ぶのに慣れていないのでぎこちない感じで
ついて行っています。
セイちゃんは慣れたものなので彩玉さん達の
スピードが遅いと感じています。
一番先を飛んではまた戻ってを繰り返して
久々の空の旅を満喫しました。
こうして空を飛んでいるとラピスちゃんやセイ(紅)ちゃんと
飛んで旅をしていた時の事が 頭に浮かびます。
一番大変だったけど楽しい思いでも多かった旅です。
ふと寂しさがこみ上げて来ました。
あの時と同じ時間を過ごす事はもう出来ないかも知れない。
(またあんな旅をしてみたいな・・)
そんな風にちょっとしんみりしながら飛んでいると
あっという間に事任八幡宮のお社が見えてきました。
到着してまずは神様にご挨拶に行きました。
彩玉さんが代表して神様と話しをします。
でも誰もが神様と会う時はとても緊張します。
お忙しい神様ですのでご挨拶出来るかどうかも
分かりませんでした。
本殿で神様にうまい具合に会う事が出来ました。
ミエルちゃんの事を聞いて見ると神様は暗い顔をされました。
今のミエルちゃんはセイ(紅)ちゃんの不在を悲しんでいます。
優しい神様は自分の事のようにミエルちゃんの
悲しみに心を痛めていました。
その時に彩玉さん達が挨拶に来ましたので
神様は忙しいさなかではありましたが彩玉さん達に
会って一度ミエルちゃんと話をしてもらう事にしました。
龍神社にいるミエルちゃんに彩玉さん達を向かわせて
セイ(青)ちゃんには一緒にミエルちゃんの守護をする
犬の守護担当と引き合わせました。
その間は他の守護がミエルちゃんを見守っています。
犬の守護はセイ(青)ちゃんと会った瞬間にふんふんと匂いを嗅いでいます。
鼻のきく犬さんなのでまずは自分に合うか、
ミエルちゃんの守護に向いているかを鼻で 判断しています。
セイちゃんの周囲をふんふんと匂いを嗅いで周っているので
セイ(青)ちゃんはなんとも 落ち着きません。
でも、神様の決めた守護仲間に失礼が無いようにじっとしていました。
満足いくまで匂いを嗅いで納得したのか犬さんは早速挨拶をして来ました。
「ようっ、これからは俺がお前の守護仲間だっ。
共に大切なミエル殿を守ろうっ、
何か聞きたい事があるなら聞いてくれっ」と
気合満点に大きな声でしゃべりました。
犬さんなので遠吠えでもしそうなくらい大きな声です。
耳元であんまり大きな声で話すのでセイちゃんは耳を
ふさぎたくなりました。 でも我慢しています。
以前のセイちゃんからは信じられない位大人な対応です。
セイちゃんも挨拶を返しました。
「はい!よろしくお願いしますっ。僕はセイと言います。
犬さんのお名前を教えて貰えますか?
それと守護をする時はどうやって戦ったり、身を守るんですか?」
犬はワォワォという感じの笑い声をあげました。
「おおっ、我が名を告げていなかったかっ。 我が名はわん太だっ。
ミエル殿直々の命名であるっ。とてもいい名だと思わぬかっ」
その嬉しそうな声音はどれだけミエルちゃんが好きかが分かりました。
そしてそのミエルちゃんに名付けて貰ったのが誇りのようでした。
「それで戦う時は我が爪とっ、我が牙で相手を思う存分に痛めつけているっ。
鋭い我が爪と牙にかなうものなどおらぬからなっ。
身を守る時は我が素早い足で走れば誰もついてこれぬっ。
戦う時は四つ足が基本であるっ」といかに自分の足が早いか、
爪と牙が鋭いかを話してくれました。
「それでセイ殿は一体得意な事はなんであるかっ?
まだ得意が無いようなら我が爪と牙で守ろうぞっ、
そして爪と牙での戦い方を教えて進ぜようぞっ」と言いました。
セイちゃんは「えっ?」と嫌な顔になりました。
爪と牙で四つ足で戦うのはどう考えても セイちゃんには無理です。
犬さんにはかっこよくてもセイちゃんでは不格好になりそうです。
それで急いで「あのっ、僕は高尾山で天狗先生にいずなの使いたかたを習って
それを使役出来ますっ」と言いました。
いつの間にかわん太さんの影響で最後に「っ」がついた話し方に
なっていますがセイちゃんは気づいていません。
わん太さんはセイちゃんの内心には気づかないようで
「おおっ、そうかっ、ではいずなを使役してミエル殿を守るのだなっ。
ふむふむっ。それもまたいいかもなっ」
わん太さんはまたワォワォと笑いました。
とってもセイちゃんを気にいっている様子です。
「セイ殿っ。ではこれから同じくミエル殿を守るものとしてよろしくなっ」
そうわん太さんが言うとセイちゃんも嬉しそうに頷きました。
「はいっ、僕の方こそっよろしくお願いしますっ」
すっかりわん太さんを好きになったセイちゃんはこれから
一緒の守護仲間が わん太さんで良かったと思いました。
(ちなみにセイちゃんが爪と牙で戦う話ですが
今はまだ子供なので爪も牙もまだ弱いと 思います。
セイちゃんが事任八幡宮の修行か守護でまめに通うようになって
成長してからわん太さんにお願いしてその戦い方を教わるのもありですね♪
今はまだいずなを使うか炎しか思いつかない状態です)
2
セイお兄ちゃんが急にいなくなってしまったので
ミエルちゃんは本殿を抜け出して
セイお兄ちゃんを追っかけて高尾山に行きたいと思いました。
大好きなセイお兄ちゃんのお手伝いをしようと思ったからです。
でもミエルちゃんの守護のわん太さんは鼻がききますのでミエルちゃんの
脱走しそうな様子を 前もって察知しました。
それでなくともずっと守護をしていればミエルちゃんの
行動パターンは丸わかりのわん太さんです。
わん太さんは困り果てて神様に相談しました。
そこで神様はミエルちゃんを説得しようと思いました。
でも神様は少し勘違いをしていました。
ミエルちゃんはすぐに納得してくれると思っていましたが
大人しく何でも言う事をきいていたミエルちゃんも
ちょうど反抗期になっていたのです。
「いやなのっ、セイお兄ちゃんのお手伝いがしたいのっ。
なんでいけないの? 僕ちゃんとお手伝いできるもん!」
そう言うミエルちゃんに困ってしまった神様は
ミエルちゃんが落ち着くまでの間龍神社に置いておくことにしました。
龍神社なら傍には大好きな木もあり、川も流れていて
守護の皆と穏やかにおしゃべりしながらのんびりすれば
心を癒すのにもちょうどいいのでは無いかと考えられたからです。
それに本殿ですと目を離したすきに高尾山に行ってしまいそうですが
龍神社なら守護さえつけておけば安心です。
神様は守護の皆にミエルちゃんの事を頼んで神社の守護に集中しました。
最近邪気や鬼が侵入を図ろうとするのでそれを防護しなければならず
ずっとミエルちゃんの事のみを考えているわけにもいかないからです。
そうして集中していると守護のわん太さんが心配そうに
神様に相談に来ました。
ミエルちゃんが龍神社の中で守護の皆を寄せ付けずにいるとの事でした。
「ほっといて~僕は誰ともお口きかないのよっ、ほっといて欲しいの~」
神様は他の守護に本殿を任せて急いでミエルちゃんの
元に行って説得を試みました。
でもミエルちゃんはいう事をききません。
こんなに我がままを言うミエルちゃんは初めての事で
神様は困ってしまいました。
それで環境を変えると少しは気持ちが変わるかも知れないと
セイ(青)ちゃんに守護に来てもらう事にしました。
何故 セイ(青)ちゃんかと言うと
ミエルちゃんとも以前から顔見知りで
セイ(紅)ちゃんの親友でもあるのでミエルちゃんの
知らないセイ(紅)ちゃんの 色んな面白い話をすれば
セイ(紅)ちゃんの不在の寂しさを慰めるのにいいのではと
考えた事と
陽気を補給していたミエルちゃんが長く落ち込んでいると周囲に
及ぼす影響ははかり知れません。
それに大好きなミエルちゃんの笑顔を見れない事も
守護の方達のやる気をそいでしまったのです。
いつでも元気に笑い声を響かせていたミエルちゃんでしたので
守護の皆はその悲しみを慰められない事を
とっても悲しんでいました。
セイ(青)ちゃんは以前会った時の様子から
(ミエルちゃんの影響を受けないようなので
守護の皆のように元気が無くなる
心配はしなくてもいいので今の守護にちょうどいい)と考えました。
特に明るいわん太さんと組ませる事で
更に陽気を補給できるとも思いました。
ですので守護を依頼したのですが
共に彩玉さんと蓮ちゃんとレイちゃんが来る事になったのは
神様も予想外でした。
ミエルちゃんが泊まりに行く話が出ていたのもあって
きっと泊りに行くのを待っているのだと思っていました。
(神様としては泊まらせるかはまだ決めていませんでした。
陽気を補給できるミエルちゃんの不在が長くなる事は
避けたいからです。守護の皆も不在を悲しむだろうと
心配もしていました)
神様は少しの間どうすべきかを考えた末
(ミエルちゃんが以前楽しく遊んだ相手である蓮ちゃんに会わせたら
少しは元気が出るかも知れない)と龍ちゃん一家の皆を
ミエルちゃんに会わせる事にしました。
彩玉さんの提案である、
「心が傷ついて眠らないで泣いているミエルちゃんに癒しを送りたい」と
言う案にも是非にお願いしたいと依頼しました。
それで皆をミエルちゃんの元に向かわせて
時間をずらして様子を見に行く事にしました。
神様自身が共にミエルちゃんの元に向かって傍で見ていたら彩玉さん達も
緊張してうまくミエルちゃんと話せないと考えた配慮でした。
それで神様はわん太さんをセイ(青)ちゃんに会わせる時間を作り
こでわん太さんとセイ(青)ちゃんの自己紹介の様子を眺めていました。
でも心はミエルちゃんへの心配であふれていましたので半分上の空でした。
その為わん太さんとセイ(青)ちゃんの自己紹介の時神様は
とても影が薄かったのです。
二人の自己紹介も落ち着き大分時間が経った事を確認してから
守護の二人を連れて行くという名目でいそいそと
早速ミエルちゃんの所に様子を見に行く事にしました。
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