ミエルちゃんの孤独④

小龍ちゃんの話

事任八幡宮での出来事②
3
時間を少し戻して彩玉さん達はミエルちゃんのいる龍神社に向かいました。
龍神社の周囲には守護の皆が悲し気に龍神社を見つめていました。
そこに彩玉さん達が来たのでもしかしてミエルちゃんを
元気づけてくれるかもしれないと
全ての守護が龍神社までの道をあけてくれました。

急にさっと皆が道をあけてくれたので彩玉さんはびっくりしました。
(えっ?いいの?)恐る恐る蓮ちゃんを抱いたまま龍神社に向かいました。
レイちゃんは彩玉さんの服をつかんでおどおどキョロキョロしながら
後ろをついて行きました。
龍神社の数歩前で彩玉さんはミエルちゃんに声をかけました。
神様の配慮を頂いても周囲には守護だらけでたくさんの目があります。
緊張していたのとい失礼の無いようにあまり近づきすぎない様にしました。

「ミエルちゃん、私は彩玉だよ。今日は蓮ちゃんを連れて来たよ。
前に一緒に遊んだことがあるのは 覚えているかな?
蓮ちゃんはお友達のミエルちゃんが悲しんでいるので心配しているよ。
よければ蓮ちゃんとお話しないかい?
お話が終わるまで一緒に連れて来たレイちゃんと
私がお社の前に 立っているから入るのは蓮ちゃんだけだよ。いいかな?」

「蓮ちゃん?・・おもちゃで一緒に遊んだ蓮ちゃん?・・
おもちゃ楽しかったなぁ」
懐かしそうにそう言っている声が聞こえました。
その声を聞いて一生懸命我慢していた蓮ちゃんが彩玉さんの腕から
身を乗り出して声をあげました。
「ミエルちゃん!
僕ねっミエルちゃんは大切なお友達だから元気ないって聞いて
すごく心配だったの。ミエルちゃん大丈夫?・・・」
ミエルちゃんが少し心が動いた様子で
「僕ね・・すごく寂しいの・・
セイお兄ちゃんのお手伝いしたかったのに・・
ダメだって・・ 僕・・お手伝いすればお兄ちゃんが
早く帰ってこれるかなって思ったのに・・
ここにいたら僕・・悲しくなっちゃったの。
色々悪い事考えてしまうから余計悲しくて・・」
ミエルちゃんが悲しそうに泣いている様子に蓮ちゃんは
彩玉さんの腕から強引に飛び降りて
タタッと龍神社に駆けて行きました。

龍神社の扉の前に駆けて行った蓮ちゃんに彩玉さんは焦りました。
蓮ちゃんをずっと抱いていたのは蓮ちゃんが暴走しそうな
気がしたのでそれを抑える為でした。
前回も会えなかった事で(蓮ちゃんが何をするか分からない)と
彩玉さんも今までのハクちゃん達との出来事で蓮ちゃんの
突拍子の無さを学んでいました。
(ハクちゃんが初めて龍ちゃん一家にやって来た時はお家に入れないよう
邪魔して玄関で泣き出した事があります。
他にもハクちゃんからおもちゃを奪った事もありました)
でも蓮ちゃんは彩玉さんの心配をよそに隙をついて飛び降りて
更に意表を突く行動に出ました。
扉を強引に開けてしまったのです。
通常扉は神様か龍神社の龍神様かミエルちゃんの
了解を得ないと開きません。
今回はミエルちゃんが誰とも会いたくないと扉を固く閉ざしていました。

それなので守護の人たちはミエルちゃんの顔を見れないので困っていました。
その扉が開いた事に見ていた守護が揃ってぎょっとしました。
「おおっ!どうして開いたんだ?ミエル殿が心を許したのか?」
「そうとしか考えられないだろう?ミエル殿の親友なのでは無いか?」
「そうかっ!だったらミエル殿の心を癒してくれるかも知れないなぁ。
それは嬉しい事だなぁ」
今まで心配していた守護の人たちは口々に蓮ちゃんに光明を見出しました。

焦っている彩玉さんや、ぼーっと(わぁ・・蓮ちゃん大胆だなぁ・・)と
眺めているレイちゃんをにこやかに見つめ
「ささっ、蓮殿のご家族の方達はこちらにどうぞ。ここからなら中の様子が
見えやすいですよ」
と開いた扉の外からでもミエルちゃんと蓮ちゃんの様子が見える特等席に
案内してくれました。
すっかり観客のような雰囲気です。

蓮ちゃんの行動に気を取られながらも
その誘いにのって特等席に移動した彩玉さんはそこで(はっ!)と
思い出しました。
(そうだ!ミエルちゃんに癒しを送らないといけないんだった!)
それで周囲の守護さん達に
「すいません、これからミエルちゃんにここにいるレイちゃんと一緒に
癒しを送ります。ですから近くにいると影響が出る可能性があります。
守護の方達はお仕事に影響が出ては大変ですから少し下がって下さい。
いいですね?」

珍しく厳しい口調の彩玉さんがそう言うと守護さん達は
すごすごと周囲を空けました。厳しい口調に考える余裕も無く
命令に従っていました。
命令に従う事に慣れている守護さんですので無意識に
身体が動いてしまったのです。
でも同時にミエル殿が信頼しているご友人の家族ですので守護の方達も
安心して任せる事が出来ました。

彩玉さんはそこで蓮ちゃんにも声をかけました。
「蓮ちゃんっ!一旦そこをどいてっ!今レイちゃんと一緒にミエルちゃんに
癒しを送るからね!さぁっレイちゃんやるよっ」
普段と違い緊張で大分強張っているのでカチカチになっています。
何も今強引にやらなくてもミエルちゃんは蓮ちゃんと話した後なら
癒しを受け入れてくれたかも知れません。

でも(今やるっ!)と思いこんでしまっていますので
気持ちに余裕がありません。
守護の人たちに見守られている事も彩玉さんの緊張に拍車がかかっています。
いつもの余裕が無い状態での癒しでした。
レイちゃんも彩玉さんの様子がいつもと違うので、
(自分もがんばらなきゃっ!)と気を引き締めて厳しい顔になりました。
周囲の守護の目が気になりましたが見ないように集中しようとして
揃ってミエルちゃんに癒しを送りました。

急に癒しを送られて無防備だったミエルちゃんは
その場で寝てしまいました。効きすぎてしまったようです。
気持ち良さそうに寝ているミエルちゃんに蓮ちゃんは
困ってしまいました。

「彩兄ちゃん!僕ミエルちゃんとお話したかったのに寝ちゃったよっ!
これじゃお話出来ないよ~」
そう文句を言う蓮ちゃんに彩玉さんは
(あ~やり過ぎたかな。
二人で全開で癒しを送っちゃったのがいけなかったかな~)と
頭をかいて失敗を反省しました。

彩玉さんは今回とっても張り切っていました。
事任八幡宮の神様や守護の方達のおかげで病を癒してもらったので
その恩返しをしたいという思いがありました。
(彩玉さんは6月に病気になった時セイ(青)ちゃんやハクちゃん、
フラちゃんが神様に癒しをお願いして癒してもらいました)

それで癒しを送る時にペース配分をしないで一気に
癒しを送ってしまったのです。
彩玉さんは普段自分の能力を活用する事があまりありませんでした。
何故なら子守にいっぱいいっぱいだったからです。
龍ちゃん一家の小龍ちゃん達は個性にあふれ、次々と問題を起こすので
彩玉さんは気が気ではありませんでした。
その為癒しよりなにより暴走しないように小龍ちゃんを見張るのに
忙しかったのです。

今は(やっちゃったなぁ・・)と反省しきりです。
レイちゃんは蓮ちゃんと彩玉さんを見比べて何がいけなかったのかを
彩玉さんに確認しようとじっと彩玉さんを見つめました。
蓮ちゃんは腕組みしてぷんぷんに怒っています。
心配していたミエルちゃんが寝てしまったので癒しを受けた事を
半分安心しているのですが
あとの半分は予定を台無しにされた気分です。

守護の人たちは
「ミエル殿が寝てしまったぞっ!最近寝ていないようで心配して
いたから良かったなぁ」
「そうだなぁ。良かった良かった!」と
口々にミエルちゃんの気持ち良さそうに
寝ている様子に皆が嬉しそうにうなずいて微笑んでいます。

腕を組んで怒っていた蓮ちゃんはそんな呑気な守護の人たちの様子に
怒っているのが馬鹿らしくなってきました。
「もっ・・もういいよっ。ミエルちゃんが起きるのを待ってるから。
彩兄ちゃんはミエルちゃんとのお話が終わるまでそこにいてね!」
そう言って龍神社にずんずんと入っていってしまいました。
そしてミエルちゃんと二人だけになるように扉を閉めてしまいました。

彩玉さんとレイちゃんはあっけに取られていました。
二人っきりになる為に勝手に入り込んで神社の末社の扉を
内側から閉めるなんて
蓮ちゃんがこんなに大胆な行動を取るとは思いもしませんでした。
それがどんなに大変な事なのかもう少し大人になっていれば
分かった事ですが蓮ちゃんにはお家の自分のお部屋に閉じこもる
ような気持で行っています。

彩玉さんは末社という聖域に勝手に入ってしまった
蓮ちゃんをどうすべきかおろおろしています。
神様に知られたら叱られてしまうのではないか
居ても立っても居られないでいます。
でも今扉を勝手に開けるわけにもいきません。
どうしたらいいのか途方にくれました。

レイちゃんは衝撃的な光景を目撃して
(僕もあんなに大胆に何か出来たらいいなぁ)
と自分には無い蓮ちゃんの行動力に
憧れを持って末社を眺めていました。







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