ゆにちゃんが来た日のその後、午後の授業
紅ちゃんは天狗先生を手助けしようと早速二人の様子を
見張りだしました。
紅ちゃんも修行に集中していません。
三人揃って修行よりも天狗先生に気に入られる事に集中しています。
結局午前の授業を無駄にしてしまったので午後は
しっかり勉強しないと期限内に修行は終わりません。
天狗先生は密かに問題児を抱えながら全ての修行を
終わらせる方法に苦悩していました。
でも三人揃って修行はそっちのけなので密かな先生の
苦悩は全然伝わっていませんでした。
天狗先生は修行方法を模索していました。
問題児2人が喜んで修行に集中してくれる方法です。
でもすぐにそんな方法が思いつくわけもなく
堅実に授業を進める事にしました。
「さあっ、午後は授業を先に進めなければ!」
天狗先生は気合を込めて授業に向かいました。
先生が気合満々で教室に入って来た途端に
早速ゆにちゃんが席を立って先生に詰め寄りました。
「先生(師匠)!拙者の着る服について相談なのですが・・」
そこにラリマーちゃんが割って入りました。
「天狗先生!
僕が昨日お話した授業を面白くするコツですが、
僕に一つアイディアがありますっ!」
天狗先生は急に2人に詰め寄られて不意な行動に
びっくりして対応に困ってしまいました。
紅ちゃんは天狗先生の困った様子を見て
急いで2人を止めに駆けつけました。
「ゆにお兄ちゃんっ!ラリマーちゃん!ダメだよっ。
ちゃんと席に着かないとっ。先生にご迷惑だよっ」
そう2人をしかりつけると
「拙者は今の服では修行に集中出来ないのであれば
天狗服を着る相談をして、
その後修行に集中するのでござるよ。
だから少しだけその時間を欲しいのでござる」
とゆにちゃんが言い、
「僕は画期的な授業の仕方を先生に教えて楽しく素早く
修行が進むようにしたいだけなんだけどなっ」
とラリマーちゃんも言います。
「それは後で授業が終わってから相談すればいいと
思うの。今は天狗先生のお邪魔にならないように
しないといけないんだよっ」
と紅ちゃんは主張します。
それぞれが意見を譲らず、3人で天狗先生の前で
わいわいとにぎやかに騒ぎ出してしましました。
天狗先生は3人の騒いでいる様子を見ながら
また頭を抱えたくなりました。
紅ちゃんの気づかいも嬉しいのですが、
揃ってわいわいしていたら
収拾がつきません。
机に教科書を置いて先生をそっちのけで
もめている3人を
見回して一旦ため息をついて
息を整えてからこの状況を解決する事にしました。
「ほらほらっ、3人とも静かにしなさい!
ここは教室で皆で騒ぐところでは無いよっ。
まずゆに、君は服の事を気にし過ぎだね。
今はその話は後にしてここでの
修行に集中しなさい。
次にラリマー、君は授業を面白くしたいのは
分かるが授業をどうするかを決めるのは私だ。
生徒である君は授業の仕方よりも内容に
集中しなさい。
最後に紅、君は私の為に動いてくれるのは
とっても嬉しいが気にしなくていいんだ。
私の事よりも自分の勉強に集中しなさい」
それぞれの顔を見ながら天狗先生は丁寧に
説教をしました。
そして皆に席に着くようにうながしました。
「さあっ、授業を始めるからおとなしく
席に着きなさい!」
皆シュンとなって大人しく席に着きました。
先生に叱られてすっかり元気の無くなった
3人はその後静かに授業を受けました。
その日の授業は淡々とスムースに進みました。
皆静かにしているので先生は
午前にできなかった部分もまとめて説明しました。
ゆにちゃんが参加していなかったので
復習も兼ねて最初をかいつまんで説明してから
その後の内容も説明しました。
分からない事の無いように細かく
しっかりと理解しているかを確認しながら
進めて行きました。
シュンとなっている割には皆勉強への理解が
早いので
真面目に授業を受ければどの子も勉強に
ついて来れるんだと先生もほっとしました。
ラリマーちゃんの目標とする
画期的な授業ではありませんでしたが
堅実なしっかりとした授業内容で漏れなく
生徒を理解させています。
午後はしっかりと通常の1日分を済ませて、
一旦休憩となりました。
先生は満足そうに
「ここで一旦休憩に入る。
夕方は管狐の使役方法を習う。
ゆっくり休むように」と
言って教室を出て行きました。
休憩で3人は揃って考え事をしていました。
紅ちゃんは
(先生のお役にたとうと思っていたのに
御迷惑をかけてしまった・・どうしよう?)と
落ち込み
ゆにちゃんは
(うむぅ。天狗服は着なくともいいのであろうか?
それはそれで寂しいでござるなぁ。
確か・・高下駄はバランス感覚を鍛えられると
聞くので鍛錬にいいであろうに・・)と
残念がり、
ラリマーちゃんは
(授業内容、僕の意見で画期的に面白くなるはずが
先生に意見を聞いてもらえないと面白くならないから
つまらないなぁ・・
でも・・先生の授業は面白くないけど・・なんで
良く分かるんだろう?うんっ。さすがは僕の
漫才の師匠だなっ。きっと漫才をしたら
分かりやすく面白いお話をしてくれるなっ!)と
面白くない授業で理解できたことに感心して
いました。
管狐体験それぞれの交流
紅ちゃんは昨日の経験から管狐さんが嫌いになっていました。
これから嫌いな管狐さんと交流しないといけないので
少し憂鬱でした。
連れてこられた管狐さんは紅ちゃんを見てにやっとしました。
(紅ちゃんにはそう見えました)からかう気満々な管狐さんに
紅ちゃんは途方にくれました。
ラリマーちゃんは長年の親友に会うかのように楽しそうに
管狐さんを受け取り早速一緒に遊び始めました。
先日同様にとっても息があっています。
ゆにちゃんは初めての管狐さんとの交流に
わくわくしていました。
運ばれてきた管狐さんを見て目をキラキラさせています。
管狐さんを天狗先生が一人一人に配っています。
紅ちゃんは苦手そうにおどおどと受け取っています。
ラリマーちゃんは友達が戻って来たように嬉しそうに
管狐さんを受け取っています。
それを見ながらゆにちゃんもドキドキしながら
管狐さんと顔を合わせました。
管狐さんは首を傾げて「キュァッ?」と鳴きました。
ゆにちゃんはその可愛さにメロメロになりました。
(うわぁあっ。な・なんてくぁあわゅいのでござるかぁ!
それがし・・・この管狐さんと友達になるのでござるかぁ・・)
自分を拙者からそれがしに呼び方が変わっているのも気づかずに
恐る恐る手を伸ばして触ってみました。
可愛らしすぎて触るのも力を込めたら壊れそうでその手つきも
とても丁寧です。
馬鹿力のゆにちゃんなのでその力加減に渾身の
精神力を使っています。
優しく触るゆにちゃんに、
お礼を言うように管狐さんはゆにちゃんの指に顔をすりすり
擦り付けて甘えています。
可愛すぎてゆにちゃんは至福の表情です。
人間だったら鼻血を出していたかも知れません。
(そっそれがし・・・拙者・・そっ・・それ・・
せっ・あっ・あれ?)
混乱しまくっています。
(幸せでござるなぁ・・
この管狐さんをこれから使役するので
あるか・・おおっ、それがし・・拙者、
使役出来るであろうか・・)
ふと紅ちゃんを見ると管狐さんが紅ちゃんの周囲を
ぐるぐる走り回っています。
紅ちゃんは
「やめて~大人しくして~ちゃんと座ってよ~」と
叫んで目をつぶってしまいました。
見かねた天狗先生が管狐さんをひょいっと
取り上げています。
紅ちゃんは疲れ果てた顔で座り込んだままです。
紅ちゃんにとっておもちゃが苦手なのと同じように
管狐さんは苦手なようです。
(紅ちゃん大丈夫だろうか?)
ゆにちゃんはお兄ちゃんとして少し心配になりました。
でも今は授業中です。
先ほど叱られたばかりで、傍に行くのもまずいかと思い、
気にはなりましたが先生に任せる事にしました。
ラリマーちゃんは楽しそうに「すごいねっ!面白~いっ!
もっと遠くまで走ってこれるの?
出来る?さすがだね~」と
管狐さんと面白がって色々しています。
笑い声が響き渡って一心同体の姿にゆにちゃんは
うらやましくなりました。
「うむっ。拙者もあれぐらい出来るようになって見せるで
ござるよ」
ラリマーちゃんに対抗意識を燃やしているゆにちゃんは
こっそりラリマーちゃんのやり方を真似してみました。
「管狐さん、ちょっとそれがしの肩に乗ってくれぬか?」
管狐さんはゆにちゃんの言葉を目を見開いてじっと聞いていましたが、
言葉を理解してすぐに「ぴょん」っと肩に乗って来ました。
ゆにちゃんはにこ~っと笑顔になりました。
「よしっ。次は~あの端っこのとこまで行って
戻って来るのでござる。出来る?大丈夫でござるか?」
管狐さんは「うんっ」とばかりに頷くとさっとかけて行って
さっと戻って来ました。
ゆにちゃんの手に戻ると(こんなの簡単だよっ)とばかりに
どや顔しているように見えました。
その可愛い仕草と思う通りに動いてくれる管狐さんに
ゆにちゃんは楽しくなってきました。
それから夢中で管狐さんと笑いながら
一緒の時間を満喫していると、
「今日はこれくらいにしよう。さぁっ管狐を回収するよ」と
さっと管狐をまとめて持って行ってしまいました。
とっても楽しんでいたゆにちゃんは管狐さんが
傍からいなくなったことで寂しさを感じました。
横を見るとラリマーちゃんも同じように寂しそうにしています。
ラリマーちゃんに何かを話しかけようとして、
ふと(そういえばと紅ちゃんはどうしたかな?)と思いました。
つい夢中になりすぎていましたが、我に返ると
さっきの紅ちゃんの様子が思い出され心配に
なったのです。
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